和歌山市感染症情報センター

今、注目の感染症
2009年

【5類感染症:定点把握】 第15週(4月6日〜4月12日)

2009年第15週の和歌山市の5類感染症(定点把握)の発生状況です。
インフルエンザは第11週をピークに急速に減少し終息傾向です。
感染性胃腸炎が再度増加ししています。

2008年末第50週に74件、第51週122件、第52週199件と大幅に増加しています。注意報が発令されました。
2009年では、第4週331件が第一のピークとなりました。以後、第5週から第8週まで200件前後で横ばいでしたが、第9週には312件、第10週は364件と増加、第11週はさらに497件に増加し、今シーズンのピークとなりました。今シーズン初の警報発令です。以後、急速に減少し、第15週には17件のみでした。今後シーズンの流行は終息と思われます。
 年齢別では、春休み後ということで、児童生徒に集中したのが幅広い年齢に拡散しています。
 県内の全ての地域で、注意報は解除され、終息の模様です。
 和歌山県環境衛生研究センターにおけるウイルス分離状況では、今シーズンの初めは、A香港型が主で、1月に入ってA香港型とAソ連型が混在、2月後半からB型が検出されてきています。また、市内の医療機関でも、現在は、ほとんどが迅速キットでB型が検出されているようです。
日ごろから、手洗いの励行による感染予防を心がけましょう。また、咳・くしゃみが出たら他の人にうつさないためにマスクを着用しましょう(「咳エチケット」)。

高齢者、小児における重症化予防にワクチンが有効です。65歳以上の方、あるいは60〜65歳の方で心臓、腎臓、呼吸器などに重篤な基礎疾患をもつ方を除いては任意接種になりますが、本格的シーズンとなる12月までの接種が勧められます。毎年ワクチン接種するよう心がけましょう。
ひろげるなインフルエンザ ひろげよう咳エチケット
 

「感染性胃腸炎」は小児に好発するロタウィルス腸炎やノロウィルス感染症にみられるように,冬季〜春先に大流行します。例年40週後半を過ぎた当たりから急激に増加を始め年末にピークを迎えます。
2008年前期は、前年と類似の推移を示しました。冬季になってからは、第50週の80件から第51週の132件、第52週は207件と急増し、警報発令となりました。
2009年に入って、徐々に減少しており、90〜100件前後で推移していましたが、第14週119件とやや多め、第15週では161件に増加しており、注意報レベルに近づいています。集団生活の場などでは、特に注意が必要です。
年齢別では、乳幼児に集中しています。
日常生活における予防としては、「手洗い」「うがい」励行などを日ごろより心がけて下さい。また嘔吐・下痢などの症状があるときには、十分に水分補給をして下さい。

ノロウィルスには塩素系の消毒剤が有効です。嘔吐物や下痢便の処理は衛生的に取り扱い、汚れた場所や衣類等は熱湯や塩素系消毒剤で消毒しましょう。乳幼児や高齢者等集団生活の場では、感染拡大の防止を心がけましょう。

RSウイルス感染症の流行は毎年冬で、特に乳幼児(特に6ヶ月未満)に中心にみられる肺炎、気管支炎などの急性下気道感染症です。ロタウイルス腸炎と並んで、冬季に流行する乳幼児に多い感染症です。乳幼児で鼻水、咳、発熱などの風邪症状に加えヒューヒュー、ゼーゼーというような「喘鳴」が聞かれる場合は、医療機関を受診するようにしましょう。
昨シーズンは第50週:20件と急増し、第52週には24件と2007年末に流行のピークを迎えました。
今シーズンでは、2008年第50週2件から第51週10件と急増、第52週は9件で横ばいです。2006年・2007年と比較すると小さな流行です。
2009年では、増減を繰り返しており、終息傾向と思われたが、第15週は7件とこの時期としては多めの報告です。

また、初発時は発症して7日〜10日間ほどはウイルスが気道分泌物内に存在しており、手や持ち物を介しての集団発生も認められるため、感染者がいる場合は接触を避けることも重要です。

2008年末では、第51週40件が、流行のピークとなっていました。
2009年では、第2週47件をピークに、第3週以降は減少、第10週33件とやや増加しましたが、以後20件前後でほぼ横ばいです。第14週・15週とも15件でした。
年齢別では1〜4才児を中心に小学生でも報告数がみられます。


2008年は、第5週に27件に急増、その後徐々に減少し10件前後で推移していたものの、第20週頃より再び20件前後の報告が続いた後、第25週より減少し、例年通り二峰性のピークを描きました。
また、冬場にはいり、第50週には14件と増加、以後8件、9件でした。
2009年では、徐々に増加し、第7週20件と最も多く、以後、減少傾向です。第14週は5件、第15週1件でした。ほぼ昨年同様の動向となっています。

本感染症では、治療が十分に行われないと劇的に重症化したり、腎炎、リウマチ熱など重篤な合併症を発症することがあるので、早期診断、適切な治療(抗生剤投与)が必要とされています。劇症型感染の発症機序が明らかでなく、有効な予防対策や拡大防止策はありませんが、突然の発熱、筋肉痛を呈する、特に高齢者では医療機関の早期受診を心がけましょう。

流行性耳下腺炎は約4年ごとに増える傾向がみられています。
和歌山市では、2006年では第10週をピークに流行が続きましたが、第19週以降漸減しています。2007年、2008年とも大きな流行なく少数報告にとどまっています。
2009年も、10件以内の報告が続いています。第14週は3件、第15週は9件でした。

しばらく流行がないので、今後の動向に注目です。

【麻しん・風しん】 (第5類感染症全数把握) 

麻しん・風しんが、2008年1月1日より全数把握疾患となりました。
麻しんは、第10週に2件報告があり、以後第17週まで報告が続きました。その後は散発的で、第23週、第30週、第42週、第46週に各々1件ずつで計23件です。
風疹は,和歌山市内では,2004年7件,2005年4件の報告(定点報告)で、以降、和歌山県の全数報告事業でも報告は0でした。2008年では、第3週に1件(16歳)、第22週に1件(70歳代)の計2件の報告でした。
2009年は、第16週に初めての報告がありました。流行期を迎えていますので、今後の動向に十分に注意が必要です。

<和歌山市の状況>
2007年は、第19〜23週にかけて、計10件報告がありました。
2008年は、第10〜46週に計23件で、年齢別の届出状況は次のとおりです。

  年齢区分
0歳 1歳 5歳 10歳 15歳 20歳 25歳 30歳 35歳 40歳
2008年 3/3〜11/10 0 6 2 7 6 0 0 1 0 1 23

ワクチン接種歴あり、修飾麻しんの診断が3例、既往歴あり1例を含んでいます。
「麻しん」と臨床診断されるまで、内科や皮膚科等複数の医療機関を受診している事例もあり、診断精度の向上が求められます。
2009年では、第16週に初めての報告例です。1歳児でワクチン接種後6か月での発症です。診断は臨床症状+IgM(+)です。

<麻しんの特徴等>
麻しんに対して免疫を持たない者が感染した場合、10日前後の潜伏期を経て発症し、発熱・咳・鼻水・眼脂・結膜充血等のカタル期(2〜4日)、発疹期(3〜5日)、回復期へと続いていきます。感染期間としては、カタル期から発疹後4〜5日までウィルスの排出の可能性があります。
なお、患者との接触から3日以内であれば、麻しんワクチンの接種により感染を予防できる可能性があります。早期診断と接触者への迅速な対応が重要です。

<市民のみなさま・特に子育て中の保護者のみなさまへのメッセージ>
麻しんの予防には、予防接種の徹底が何より重要です。【Stop 麻しん・風しん】を参照。お子様が満1歳になりましたら先ず麻しんワクチン(=麻しん・風しん混合ワクチン)を接種しましょう。また、就学前の1年間の2回目の接種も忘れずうけましょう。
平成20年度から5年間、中学1年生及び高校3年生相当の方も麻しん風しん混合ワクチンの接種対象となります。対象者の方が接種できる期間は、それぞれ1年間のみです。早めに接種しましょう。

<若年成人の方へのメッセージ>
ワクチン接種率が向上し,罹患者は減ったものの,接種漏れなどで免疫のない人がかかると重症化する恐れがあります。現在の20歳代及び10歳代後半の若年者は、ワクチンの接種率が低く、また、接種者でも接種から10年以上が経過しているため、抗体価が低下して場合もあるため、感染者が多くでています。接種歴のない方や抗体価が低い場合は、ワクチン接種が必要です。
機会を見て、ワクチン接種(任意接種)をうけましょう。
また、発熱等の症状があった場合には、医療機関を受診し、診断をうけましょう。発熱等があるときに無理して職場や学校等へ行くことは、感染性の疾患であった場合、感染拡大につながりますので控えてください。

Stop 麻しん・風しん = 「予防接種」は最も有効で積極的な予防法!!


麻しん・風しんの予防接種は,平成18年4月1日より,次のとおりです。
第1期 満1歳〜満2歳になるまでの間に1回
第2期 満5歳〜7歳未満で,小学校入学日の1年前の日から小学校入学前日までの間に1回

いずれも,「麻しん風しん混合ワクチン」を接種しますが,いずれか一方の既往歴がある場合等には,「麻しん単抗原ワクチン」もしくは「風しん単抗原ワクチン」を接種します。1回接種では、将来抗体価の低下が危惧されます。目標は95%以上。第2期を忘れず接種しましょう。第2期の接種率は平成18年度71%、平成19年度は88%でした。平成20年度は2月末現在で69%と低迷しています。
「麻しん排除計画」の一環として、平成20年4月1日から平成25年3月31日までの5年間、麻しん・風しんの予防接種 第3期・第4期が実施されます。

第3期 中学1年生で 「麻しん風しん混合ワクチン」を1回接種
第4期 高校3年生相当で 「麻しん風しん混合ワクチン」を1回接種


いずれも95%以上の接種率を目標とし、麻しん・風しんの排除を目指しています。
このことにより 平成2年4月2日以降に出生したものは、高校卒業までに麻しん・風しんワクチンの2回接種が完了することになります。
しかし、平成20年度の接種率は、2月末現在で、第3期69%、第4期61%と、目標よりかなり低い数値となっています。

風しんと先天性風しん症候群の予防について


ワクチン未接種で罹患したこともない女性が妊娠初期に風疹に罹患したときにウィルスが胎児に感染し,出生児に「先天性風疹症候群」を起こすことがあります。この先天性風疹症候群は「感音性難聴」「白内障または緑内障」「心疾患」が3主徴で,通常妊娠第16週までに起ることが殆どです。
感染症法では,「先天性風しん症候群」は全数把握となっていますが,いままで1年に全国で1件以内だったのが,2004年では,9件の報告がありました。
和歌山市内では1999年以降,「先天性風疹症候群」の報告はありません。
また,「風疹」は,和歌山市内では,2004年7件,2005年4件の報告でした。2008年第3週で5年ぶりに1件の報告がありました。
非流行時から妊娠可能年齢の女性の積極的な予防接種が重要です。また,流行阻止のために,ワクチン接種歴がなく,罹患もしていない人は,男女とも予防接種(任意接種)を受けることが望まれます。
なお,妊娠可能な女性については,ワクチン接種後2か月間の避妊が必要です。


| 過去の注目の感染症 | トップページに戻る |