和歌山市感染症情報センター

Wakayama City Infectious Disease Surveilance Center
2012年
5類感染症:定点把握
第14週(4月2日〜4月8日)

2012年第10週の和歌山市5類感染症(定点把握)の発生状況です。

5類感染症:全数把握 第14週
5類感染症(全数把握疾患)の発生状況です。
インフルエンザ
ピーク過ぎるも、インフルエンザ流行、まだ終息せず!

2011-2012シーズンは、昨年の第49週より患者報告が増え始め、第52週171件(定点当り11.4)となり、流行発生注意基準値を超えました。学校等が冬季休暇中だった2012年第1週は76件とやや減少しましたが、第2週より163件(定点当り10.9)と再び増加に転じました。第3週に報告609件(定点当り40.6)と急増し、流行発生警報基準値(30)を超えました。第4週は948件(定点当り63.2)で、ここ10年間では最も多い報告でした。その後報告減少し、第8週221件、第9週171件、第10週159件(定点当り10.6)でしたが、第11週が220件(定点当り14.67)と増加しました。第12週も219件(定点あたり14.60)となっています。第13週では191件(定点あたり12.7)とやや減少しています。さらに第14週で110件(定点あたり7.33)と減少し、流行発生警報が解除となりました。ピークは過ぎているものの、まだ注意が必要です。
市内の学級等における閉鎖等の措置数は第3週以降急激に増加し、第3週27施設、第4週は80施設、第5週は70施設でした。第6週以降減少し、第11週は7施設でした。

年齢別患者数報告は4〜5歳が最も多く、次に多いのが10〜14歳でした。報告の80〜90%を15歳未満の年齢が占めています。



現在、市内の流行の中心は15歳未満の子供ですが、今シーズンは昨シーズンよりも早いペースで高齢患者の報告も増えています。0歳〜80歳以上まで、どの年代からも患者報告が出ているので、子供だけでなく、高齢者もインフルエンザに注意が必要です。

 市内でのインフルエンザ流行拡大に伴い、インフルエンザ入院患者数が急激に増加しました。入院患者の年齢は10歳未満と65歳以上に集中しています。インフルエンザ患者の減少に伴ない、入院患者数は減少し、第11週入院患者は1人となりました。


[インフルエンザウィルス調査] 今シーズンはA/H3が流行の主流!第4週以降はB型インフルエンザも増加中!
今シーズン和歌山市内で実施したインフルエンザウィルス調査では、第3週まではほとんど全ての検体がA/H3でした。その後、第4週よりウィルス調査でBも散見するようになってきており、第6週以降のウィルス調査ではB型インフルエンザの割合がA/H3を上回っています。

外出後は手洗い・うがいをし、感染予防に努めましょう。また、咳やくしゃみなどの症状がある時は他の人へうつさないよう、マスク着用を徹底しましょう。

高齢者や小児、妊婦、持病をお持ちの方はかかると重症化する可能性がありますので、ワクチン接種をお勧めします。



[2010-2011シーズンインフルエンザの流行状況]  

昨シーズン(2010-2011年)は、第1週から患者数増加し始め、第3週144件(定点当り9.60)に急増、第4週243件(定点当り16.2)で注意報発令されました。これが第1のピークで、第7週には93件と注意報値を下回りました。ウイルスサーベイランスの結果より、A/H1(2009)の流行によるものでした。その後患者数減少しましたが、第10週より再び増加し始め、第11週141件、第12週146件と2つ目のピークを形成しました。その後緩やかに減少しましたが、第16週から再度増加に転じ、第17週107件と第3のピークを形成しました。B型及びA香港型が流行の中心でした。以後患者数減少し、終息しました。

※次の図は、ウイルスサーベイランスの結果です。第8週以降徐々にA/H1(2009)の流行からからA/H3の流行に以降しているのがわかります。


感染性胃腸炎
今年は例年より報告少数で経過しています

「感染性胃腸炎」は小児に好発するロタウィルス腸炎やノロウィルス感染症にみられるように、冬季〜春先に大流行します。年齢別報告では乳幼児と小学生での報告が中心ですが、おとなの報告もあります。特に集団生活をされている方は日頃からの手洗いや、便の取り扱いに注意が必要です。
昨シーズン(2010-2011シーズン)は、例年より早い11月初めから増加し始め、2010年第47週が238件とピークでした。2011年に入り、第9週から11週の頃に第2のピークがありましたが、以後報告減少し、第22週以降概ね50件以下で推移しました。
今シーズン(2011-2012シーズン)は、例年に比べ、流行の立ち上がりは遅く、2011年第46週以降に患者報告数が徐々に増加し、2012年第3週113件、第4週128件となりましたが、その後の報告は減少し、90件前後で続きました。第8週80件、第9週95件、第10週91件(定点当り10.11)でした。第11週報告は更に減少し、72件(定点当り8)、第12週は63件(定点あたり7.00)でした。第14週では47件(定点あたり5.22)となっています。過去10年間の同じシーズンと比較すると、小さい流行となっています。

例年、冬季は感染性胃腸炎が流行する季節ですので、特に集団生活の場などでは感染拡大防止策を引き続き行うことが重要です。


ノロウィルス等には塩素系の消毒剤が有効です。嘔吐物や下痢便の処理は衛生的に取り扱い、汚れた場所や衣類等は熱湯や塩素系消毒剤で消毒しましょう。

また、ウイルス性腸炎のみならず、サルモネラや腸炎ビブリオ、キャンピロバクターや黄色ブドウ球菌、旅行者下痢症(大腸菌感染が多い)などの細菌性腸炎にも注意が必要です。これらは主に食中毒として発生します。調理前後や食事前には「手洗い」を励行し、食品の冷所保存を心がけ、長期保存は避けるなど、日常生活での予防を心がけて下さい。また嘔吐・下痢などの症状があるときには、十分に水分補給をし、症状がひどくて水分も摂れない場合には医療機関を受診して下さい。
RSウイルス感染症
患者報告5件前後で推移しています

RSウイルス感染症は冬季(11月〜3月)に流行する、乳幼児(特に6ヶ月未満)中心にみられる肺炎、気管支炎などの急性下気道感染症です。ロタウイルス腸炎と並んで、冬季に流行する乳幼児に多い感染症です。乳幼児で鼻水、咳、発熱などの風邪症状に加えヒューヒュー、ゼーゼーというような「喘鳴」が聞かれる場合は、医療機関を受診するようにしましょう。
今シーズン(2011-2012シーズン)は例年より早い第30週頃より1〜10件程度の報告が続きました。大幅な患者増加は認めませんでしたが、12月末に患者数やや増加し、報告10〜14件程度に増加しました。2012年に入り、患者数10件以下の報告が続きました。第9週5件、第10週5件、第11週4件(定点当り0.44)でしたが、第12週は13件と増加していますが、第13週で6件、14週で7件と10件以下の報告数でした。
第30週〜第11週まで報告があった患者の95%が2歳以下でした。



予防のために、うがい、手洗いによる感染予防を行いましょう。また、初発時は発症して1週〜10日間ほどはウイルスが気道分泌物内に存在しており、手や持ち物を介しての集団発生も認められるため、感染者がいる場合は接触を避けることも重要です。

水痘
10〜20件前後で推移しています

昨年は第1週から3週の間と、連休中の第18週から20週の間に小さいピークがありました。その後は落ち着き、第28週以降、10件以下の報告が続きましたが、第45週に20件と急増、その後も20件前後の報告が続きました。
2012年に入り報告数減少し、10件前後で推移し、第8週10件、第9週17件、第10週9件でした。第11週は22件(定点当り2.44)とやや増加し、第12週19件(定点あたり2.11)、第13週では17件(定点あたり1.89)、14週で13件(定点あたり1.44)でした。
例年より小さい流行ですが、学校や保育園、幼稚園など集団生活の機会がある方は、注意して下さい。
 水痘は、空気感染で、咽頭から水痘帯状疱疹ウイルスが空中に放出され、口腔や鼻粘膜から侵入し感染します。接触感染することもあります。発疹が出る数日前からすでに感染性があるため、集団生活で感染拡大しやすい疾患です。

ワクチンは、任意接種ですが、1歳以降での接種が勧められます。水痘のワクチンは、接種していても発病することがありますが、軽症で済み、接種することで重症化を防ぐ効果があります。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
例年より報告少ないです

感染症発生動向調査のデータによると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は冬季および春から初夏にかけて2 つピークが認められる傾向があります。
2011年は、5件未満で推移していましたが、第6週〜9週まで10件前後と若干増加が認められました。第7週、劇症型の報告が1件(90歳女性)ありました。その後は10件以下で推移しています。
2012年も10件以下の報告が続き、第8週8件、第9週8件、第10週7件、第11週4件、第12週2件、第13週で6件でした。

本感染症は、治療が十分に行われないと劇症化したり、急性糸球体腎炎やリウマチ熱など重篤な合併症を発症したりすることがあるので、早期診断、適切な治療(抗生剤投与)が必要です。劇症型感染の発症機序は明らかでなく、有効な予防対策や拡大防止策はありません。突然の発熱、咽頭痛、筋肉痛、発疹などがある場合、早期受診を心がけましょう。一般的には小児に多いですが、成人でも発症します。

マイコプラズマ肺炎
0〜2件で推移しています

マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマによって起こる呼吸器感染症です。幼児期から学童期によく見られる感染症です。感染経路は主に飛沫や接触感染といわれています。保育施設や幼稚園、学校、あるいは家庭内などの濃厚な接触で感染します。
全国では昨年の第25週以降、1999年の調査開始以降の同時期と比較して報告が最も多い状態が継続しています。第50週以降、全国の報告数は減少し始めましたが、2011年第5週においても例年以上の報告が続いており、全国ではマイコプラズマの流行が続いています。
和歌山市内においては、2011年第38週より1〜2件の報告が続きました。
2012年の第5週は7件の報告がありましたが、以降、第8週0件、第9週0件、第10週2件、第11週2件(定点当り0.67)、第12週4件、第13週で1件、14週で0件でした。  
また、今年は薬の効きにくいマイコプラズマの報告も見られます。マイコプラズマ感染症と診断され、治療を開始したにもかかわらず症状の改善がない場合は主治医に相談しましょう。 特別な予防方法はありませんので、流行時期には他の感染症と同じく手洗いや、うがいをして感染予防に努めましょう。また、咳などの症状がある時には、他人にうつさないようマスクをしましょう。

麻しん・風しん
第5類感染症全数把握

麻しん・風しんが、2008年1月1日より全数把握疾患となりました。
麻しんは2008年23件、2009年6件、2010年1件、2011年0件でした。
風しんは2008年2件、2009年1件、2010年0件、2011年0件でした。

2012年第14週現在、麻しん、風しんともに報告はありません。


風しん
2012年:第14週現在、報告なし

<和歌山市の状況>
風疹は,和歌山市内では,定点報告で、2004年7件,2005年4件でした。以降、和歌山県の全数報告事業でも報告は0でした。
2008年は、第3週(16歳)、第22週(70歳代)の計2件の報告でした。
2009年は、第17週で初めての報告。11歳です。単抗原ワクチン接種済みでした。

 

2010年、2011年は報告がなく、2012年第14週現在まで発症報告はありません。

麻しん
2012年:第14週現在、報告なし

<和歌山市の状況>
2007年は、第19〜23週に計10件の報告がありました。
2008年は、第10〜46週に計23件、2009年は、第16〜24週に計6件でした。
2008年、2009年の年齢別の届出状況は次のとおりです。
2012年第14週現在、和歌山市内で麻しんの報告はありません。



2011年に関東地方を中心に4月半ば〜5月半ばにかけて麻しん報告数が増加しました。全国の患者の報告は1歳をピークに0〜4歳の小児が最も多いですが、20〜40代の成人患者も40%占めており、子どもだけでなく成人も麻しんに注意が必要です。

早期に診断することとワクチン接種が重要です。
  年齢区分
0歳 1歳 5歳 10歳 15歳 20歳 25歳 30歳 35歳 40歳
2008年 3/3〜11/10 0 6 2 7 6 0 0 1 0 1 23
2009年 0 6 0 0 0 0 0 0 0 0 6
2010年 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1

<麻しんの特徴>
麻しんに対して免疫を持たない者が感染した場合、10日前後の潜伏期を経て発症し、発熱・咳・鼻水・眼脂・結膜充血等のカタル期(2〜4日)、発疹期(3〜5日)、回復期へと続いていくウイルス感染症です。感染期間としては、カタル期から発疹後4〜5日までウイルスの排出の可能性があります。

なお、患者との接触から3日以内であれば、麻しんワクチンの接種により感染を予防できる可能性があります。早期診断と接触者への迅速な対応が重要です。



<麻しんのウイルス診断>
2015年の麻しん征圧を目指して、様々な取り組みが実施されていますが、診断精度をより高めるために、麻しん(疑い)と診断された場合、ウイルスPCR検査を全例に実施しています。咽頭ぬぐい液及び血液の採取にご協力ください。

<市民のみなさま・特に子育て中の保護者のみなさまへのメッセージ>
麻しんの予防には、予防接種の徹底が何より重要です。【Stop 麻しん・風しん】を参照。お子様が満1歳になりましたら先ず麻しんワクチン(=麻しん・風しん混合ワクチン)を接種しましょう。また、就学前の1年間の2回目の接種も忘れずうけましょう。
平成20年度から5年間、中学1年生及び高校3年生相当の方も麻しん風しん混合ワクチンの接種対象となりました。対象者の方が接種できる期間は、それぞれ1年間のみです。早めに接種しましょう。

<若年成人の方へのメッセージ>
ワクチン接種率が向上し,罹患者は減ったものの,接種漏れなどで免疫のない人がかかると重症化する恐れがあります。現在の20歳代及び10歳代後半の若年者は、ワクチンの接種率が低く、また、接種者でも接種から10年以上が経過し抗体価が低下している場合もあるため、感染者が多くでています。接種歴のない方や抗体価が低い場合は、ワクチン接種が必要です。
機会を見て、ワクチン接種(任意接種)をうけましょう。


また、発熱等の症状があった場合には、医療機関を受診し、診断をうけましょう。発熱等があるときに無理して職場や学校等へ行くことは、感染性の疾患であった場合、感染拡大につながりますので控えてください。
Stop 麻しん・風しん = 「予防接種」は最も有効で積極的な予防法!!

麻しん・風しんの予防接種は,平成18年4月1日より,次のとおりです。
第1期 満1歳〜満2歳になるまでの間に1回
第2期 満5歳〜7歳未満で,小学校入学日の1年前の日から小学校入学前日までの間に1回


いずれも,「麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)」を接種しますが,いずれか一方の既往歴がある場合等には,「麻しん単抗原ワクチン」もしくは「風しん単抗原ワクチン」を接種します。1回接種では、将来抗体価の低下が危惧されます。目標は95%以上。第2期を忘れず接種しましょう。平成21年度の接種率は第1期:94.4%・第2期:94.3%と、目標を下回っています。
麻しん排除計画」の一環として、平成20年4月1日から平成25年3月31日までの5年間、麻しん・風しんの予防接種 第3期・第4期が実施されています。

第3期 中学1年生で 「麻しん風しん混合ワクチン」を1回接種
第4期 高校3年生相当で 「麻しん風しん混合ワクチン」を1回接種


いずれも95%以上の接種率を目標とし、麻しん・風しんの排除を目指しています。
このことにより 平成2年4月2日以降に出生したものは、高校卒業までに麻しん・風しんワクチンの2回接種が完了することになります。


しかし、平成21年度の接種率は、第3期90.6%、第4期81.2%と平成20年度より向上しましたが、目標の95%をかなり下回っています。
風しんと先天性風しん症候群の予防について

ワクチン未接種で罹患したこともない女性が妊娠初期に風疹に罹患したときにウイルスが胎児に感染し,出生児に「先天性風疹症候群」を起こすことがあります。この先天性風疹症候群は「感音性難聴」,「白内障または緑内障」,「心疾患」が3主徴で,通常妊娠第16週までに起ることが殆どです。
 感染症法では,「先天性風しん症候群」は全数把握となっていますが,今まで1年に全国で1件以内だったのが,2004年では,9件の報告がありました。
和歌山市内では1999年以降,「先天性風疹症候群」の報告はありません。
 また,「風疹」は,和歌山市内では,2004年7件,2005年4件の報告でした。2008年第3週で5年ぶりに1件の報告があり年間で2件でした。
非流行時から妊娠可能年齢の女性の積極的な予防接種が重要です。また,流行阻止のために,ワクチン接種歴がなく,罹患もしていない人は,男女とも予防接種(任意接種)を受けることが望まれます。

 なお,妊娠可能な女性については,ワクチン接種後2か月間の避妊が必要です。
これまでの注目の感染症
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