12月1日は世界エイズデー
HIV感染症は、医療の進歩により、早期に発見し適切な治療を受ければ、エイズを発症することなくこれまで通りの社会生活を営み、他者にも感染させない状況にすることも可能となってきています。
差別や偏見の解消や、流行の終息のためには現状を正しく知ることが重要です。
UNAIDS(国連合同エイズ計画)は、2030年までにエイズの流行を終結させるという目標を掲げています。目標達成への第一段階は、必要な人が検査を受けて感染に気付くことと言われています。
HIVは、ヒト免疫不全ウイルスというウイルスの名前。ヒトの免疫細胞に感染するウイルスです。
免疫細胞は、さまざまな細菌、カビやウイルスなどの病原体からヒトの体を守っています。
HIVに感染すると体の中の免疫細胞が減っていき、普段は感染しない病原体にも感染しやすくなり(日和見感染症と言います)、悪性腫瘍なども発症しやすくなります。
この病気の状態をエイズ(後天性免疫不全症候群)といい、代表的な23の疾患が決められており、これらを発症した時点でエイズと診断されます。
HIVに感染した後は、(1)感染初期、(2)無症候期、(3)エイズ発症期の経過をたどります。
HIVに感染して、治療をしないと数年〜10年ほどで、エイズを発症します。中には、短期間のうちにエイズを発症をする人もいます。
感染初期には、風邪やインフルエンザのような症状がでることがあります。
その後、自覚症状のない無症候期が数年〜10年程度続きますが、体の中ではHIVが増加し、免疫力が徐々に低下していきます。
免疫力が極度に低下すると、日和見感染症や悪性腫瘍を発症し、エイズを発症します。
症状がない期間でも、人に感染させる可能性があります。
全国の新規のHIV感染者及びエイズ患者は、令和4年884件であり、近年減少傾向にあります。しかし、およそ3割が既にエイズを発症して見つかっています。自分がHIVに感染していることを知らない人が数多く存在するとも言われ、決して油断できない状況です。
HIVは感染者の血液、精液、膣分泌液、母乳などに含まれています。
HIVの感染経路は主に3つだけです。
- 性的接触
約80%が性行為による感染です。中でも男性同性間接触が一番多く、次に多いのが異性間接触です。オーラルセックスでも感染する可能性はあります。またアナルセックスは粘膜が傷つきやすいので、感染リスクが高いと言われています。ピルには感染を防ぐ効果はありませんので、必ずコンドームを使用しましょう。他の性感染症に感染している人は、HIV感染の確率が2〜4倍も高くなると言われています。
- 血液感染
覚せい剤の回し打ちなど注射器の共用で感染します。回し打ちは、HIV感染だけでなく、B型肝炎やC型肝炎についても非常に感染率が高くなります。輸血については、現在、献血された血液は非常に厳格なHIV検査を実施されており、感染の危険性は極めて低いです。(ただし、献血のHIV検査結果は献血者本人には伝えられません。検査目的の献血は絶対にやめましょう。)
- 母子感染
お母さんがHIVに感染していると、妊娠中や出産時、母乳から赤ちゃんに感染することがあります。しかし妊娠中から抗HIV薬の内服を始め、帝王切開や粉ミルクでの養育を選択することで、赤ちゃんへの感染を1%以下に減らすことができると言われています。。
HIVが生息できるのは体液や血液の中だけ。空気や水に触れると感染力を失います。唾液、涙、尿などでは他の人に感染させるだけのウイルス量は含まれていません。HIVは感染力の弱いウイルスなので、性行為以外の日常的な生活での接触では感染しません。
ワクチンはまだありませんが、HIVは感染力の弱いウイルスなので予防可能です。新規感染の80パーセント以上が性的接触によるものです。コンドームを正しく使うことが重要です。
【性行為での注意点3つ!】
- NO SEX(セックスしない)
HIVを含む多くの性感染症は、性的接触により感染します。ノーセックスも予防のための大事な選択肢です。
- SAFE SEX(安全なセックス)
二人ともHIVに感染していないことが確実でお互いに他のセックスパートナーがいなければ、二人のセックスは安全です。
- SAFER SEX(より安全なセックス)
相手や自分が感染していないかどうかわからないときには、コンドームを正しく使いましょう
<コンドームの正しい使い方>
- 袋の中身を端に寄せ、傷つけないように開ける
- 裏表を確認
- 精液だめの空気を抜く
- ペニスにつけてゆっくりと巻き下す
- かぶせた部分を亀頭方向に動かし、根元の余っている皮を伸ばす
- 皮を伸ばしたまま押さえ、根元まで下す
- 射精したら、コンドームが外れないように根元を押さえながらペニスを抜く
- 口を縛ってティッシュに包んで捨てる
<相手がコンドームを嫌がったら…>
「ゴムを使うための100の方法」を検索してみてください。たくさんのヒントが紹介されています。http://www.health-issue.jp/the_100_answers_girls.pdf
HIVを完全に取り除く治療はまだないですが、早期に抗HIV薬の服用を開始すれば、エイズの発症を抑えることが可能となってきています。治療は進歩し、1日1錠の内服や2か月に1回の注射も開発されています。HIV感染症はいまや「死の病」ではなくなってきています。
〈HIV感染症診療拠点病院〉
全国に約390か所、和歌山県に3か所の医療機関が拠点病院に指定されています。通院しやすい病院を自分で選択することができます。