和歌山市感染症情報センター

Wakayama City Infectious Disease Surveilance Center
2012年
5類感染症:定点把握
第34週(8月20日〜8月26日)

2012年第1〜34週の和歌山市5類感染症(定点把握)の発生状況です。

全数把握感染症(結核を除く)
第34週(8月20日〜8月26日)
2012年第1〜34週までの発生状況の概要です。
感染性胃腸炎 Infectious gastroenteritis
第34週は前週より増加しました。

 「感染性胃腸炎」は冬場に流行する代表的な感染症であり、その大半は、ノロウイルスやロタウイルス等のウイルス感染を原因とするものです。 多くの患者は、乳幼児や学童ですが、成人にも見られます。
 今シーズン(2011-2012シーズン)は、例年に比べ、流行の立ち上がりは遅く、2011年
第46週以降に患者報告数が徐々に増加し、2012年第3週113件、第4週128件となりました。その後、報告数は減少し、第14週47件(定点あたり5.22)となりました。第15週61件、第16週81件、第17週84件(定点あたり9.33)でした。第18週42件(定点あたり4.67)と減少しましたが、その後、報告数は増加し、第22週122件(定点あたり13.6)、第23週112件となりました。第24週81件、第25週63件と減少しました。第26週以降、減少傾向であり、第33週18件と2012年で最も少ない報告数となりました。第34週は35件(定点あたり3.89)と増加しました。

 ノロウイルスには、塩素系の消毒剤が有効です。嘔吐物や下痢便の処理は、衛生的に取り扱い、汚れた場所や衣類等は、熱湯や塩素系消毒剤で消毒しましょう。特に、集団生活をされている方は、日頃からの手洗いや便の取り扱いに注意が必要です。 嘔吐・下痢などの症状があるときには、水分補給をし、症状がひどくて水分も摂れない場合は、すみやかに医療機関を受診して下さい。m


RSウイルス感染症 Respiratory Syncytial Virus Infection
第34週は前週より減少しました。

 RSウイルス感染症は、冬場(11月〜3月)にかけて主に乳幼児で流行する感染症です。乳幼児が感染すると、細気管支炎や肺炎をおこすことがあります。鼻水、咳、発熱などの風邪症状に加えヒューヒュー、ゼーゼーというような「喘鳴」が聞かれる場合は、医療機関を受診しましょう。
 今シーズン(2011-2012シーズン)は例年より早い第30週頃より1〜10件程度の報告が続きました。大幅な患者増加は認めませんでしたが、12月末に患者数はやや増加し、報告数は10〜14件程度に増加しました。2012年に入り、患者数10件以下の報告が続きました。第9週5件、第10週5件、第11週4件(定点当り0.44)でしたが、第12週は13件と増加しました。その後、第13週6件、第14週7件、第15週2件、第16週0件と減少し、第17週以降では0〜3件で推移していたが、第33週は5件と増加しました。第34週は2件でした。
 今シーズン(2011-2012シーズン)の患者の95%が2歳以下です。



 予防のために、うがい、手洗いによる感染予防を行いましょう。また、初発時は発症して7日〜10日間はウイルスが気道分泌物内に存在しており、手や持ち物を介しての集団発生も認められるため、感染者がいる場合は接触を避けることが重要です。

水痘 Varicella
第34週は前週と同じく4件。

 今シーズン(2011-2012シーズン)は、第28週以降、10件以下の報告が続きましたが、第45週に20件と急増し、その後も20件前後の報告が続きました。2012年に入り報告数が減少し、10件前後で推移し、第11週22件(定点当り2.44)、その後、第20週26件、第22週35件(定点あたり3.89)、第23週21件とピークがありました。その後、減少し、第27週19件(定点あたり2.11)と再度増加しました。第30週8件(定点あたり0.89)、第31週4件(定点あたり0.44)、第32週2件(定点あたり0.22)と2週連続減少しましたが、第31・32週4件(定点あたり0.44)でした。
 例年より小さい流行ですが、学校や保育園、幼稚園など集団生活の機会がある方は、注意して下さい。
 水痘は、空気感染で、咽頭から水痘帯状疱疹ウイルスが空中に放出され、口腔や鼻粘膜から侵入し感染します。また、接触感染することもあります。発疹が出る数日前からすでに感染性があるため、集団生活で感染拡大する可能性が高い疾患です。



 ワクチン接種は、任意接種ですが、1歳以降での接種が勧められます。水痘のワクチン接種は、接種していても発病することがありますが、軽症で済み、接種することで重症化を防ぐ効果があります。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 Group A streptococcal pharyngitis
第34週は前週より減少しました。

 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、春から夏、冬季の2つの時期をピークとして流行がみられます。
 2011年は、5件未満で推移していましたが、第6週〜9週まで10件前後と若干増加が認められました。第7週、劇症型の報告が1件(90歳女性)ありました。その後は10件以下で推移しています。
 2012年も10件以下の報告が続きましたが、第24週14件、第25週15件、第26週14件と増加しました。その後、第27週5件、第28週6件、第29週4件、第30週2件、第31週6件、第32週1件でした。第33週は7件と前週より増加しました。第34週は1件でした。


 本感染症は、治療が十分に行われないと劇症化したり、急性糸球体腎炎やリウマチ熱など重篤な合併症を発症したりすることがあるので、早期診断、適切な治療(抗生剤投与)が必要です。劇症型感染の発症機序は明らかでなく、有効な予防対策や拡大防止策はありません。突然の発熱、咽頭痛、筋肉痛、発疹などがある場合、早期に医療機関を受診してください。一般的には小児に多いですが、成人でも発症します。

ヘルパンギーナ Herpangina
4週連続減少し、流行警報は解除されました。

 2012年第28週15件(定点あたり1.67)、第29週50件(定点あたり5.56)、第30週80件(定点あたり8.89)と増加しています。第30週は、流行発生警報基準値(定点あたり6)を超えました。第31週49件、第32週21件、第33週8件、第34週5件(定点あたり0.56)と4週連続減少し、流行のピークは過ぎたと考えられます。


 ヘルパンギーナはいわゆる夏カゼの代表的疾患で、夏と秋に流行が見られます。主な症状は発熱とのどの強い痛みです。
 原因は、A群コクサッキーウィルス等の腸管ウィルスです。患者の咳やくしゃみでウィルスが飛び散り、それを他の人が吸い込んで感染します。患者のほとんどは4歳以下の小児です。

百日咳 Pertussis
第34週は報告がありません。

 百日咳は、百日咳菌によって起こる呼吸器感染症です。百日咳は乳幼児を中心とした小児だけではなく、成人例での報告があります。成人では、咳が長く続きますが、比較的軽い症状で経過することが多く、受診・診断が遅れることがあります。気づかないうちにワクチン未接種の新生児や乳幼児への感染源となることがあるので、注意が必要です。
 和歌山市の患者報告数は、2012年第21週1件(5ヶ月未満)、第22週1件(7歳)であり、第33週は5件(定点あたり0.56)の報告があり、年齢構成別の数は、10〜14歳2件、15〜19歳1件、20歳以上2件でした。第34週は報告がありませんでした。

マイコプラズマ肺炎 Mycoplasma pneumonia
第34週は前週より増加しました。

 マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマによって起こる呼吸器感染症です。幼児期から学童期によく見られます。感染経路は主に飛沫感染や接触感染といわれています。保育施設や幼稚園、学校、あるいは家庭内などの濃厚な接触で感染します。
 和歌山市の患者報告数は、2012年第5週7件(定点あたり2.33)の報告がありました。第12週4件(定点あたり1.33)、第16週3件、第21週2件、それ以降、0〜2件で推移していましたが、第34週は4件と増加しました。全国では、過去5年間の同時期と比較してかなり多い報告数が続いています。
 近年、薬の効きにくいマイコプラズマの報告も見られます。マイコプラズマ感染症と診断され、治療を開始したにもかかわらず、症状の改善がない場合は、主治医に相談しましょう。


感染を広げないためのポイントは、咳エチケット手洗いです。咳があるときはマスクを着用しましょう。

麻しん・風しん
第5類感染症全数把握

 麻しん・風しんが、2008年より全数把握疾患となりました。
 風しんの報告数は、現在、東京、大阪、兵庫を中心に、その他の地域でも増えています。成人男性を中心に感染しており、流行している地域では、学校内・職場・施設内での集団発生や妊婦や妊婦の家族での感染も報告されています。和歌山市内における風しんの報告数は、2012年現在、第16週1件、第28週1件、第32週2件、第33週1件で、今後増加する可能性があるため、十分な注意が必要です。


 麻しんは2008年23件、2009年6件、2010年1件、2011年0件、2012年現在0件です。


風しん Rubella
第34週は報告がありません。

<和歌山市の状況>
 和歌山市内における風疹の報告数は、2008年は、第3週(16歳)、第22週(70歳代)の計2件でした。2009年は、第17週(11歳)1件で、単抗原ワクチン接種済みの方でした。2010年、2011年と報告ありませんでした。2012年も第15週まで報告はありませんでしたが、第16週1件(17歳:女性)、第28週1件(38歳:男性)、第32週2件(22歳:女性, 23歳:男性)、第33週1件(45 歳:男性)の計5件の報告があります。
 現在、風疹の報告数は、関東地方、関西地方を中心に他の地域でも増加しています。報告例の年齢・性別の傾向は、成人男性が中心です。女性の報告例をみると、出産年齢とされる年代が7割以上を占めているため、胎児が先天性風しん症候群という病気になる危険性が高くなるため、注意が必要です。
 風しんは、発熱、発しん、リンパ節の腫れなどを特徴とする病気です。患者から出る風しんウイルスが口からでるつばなどのしぶきを介して感染します。予防には、ワクチン接種が有効です。
 風しんを疑うような、発熱、発しん、リンパ節の腫れなどの症状がありましたら、早めに医療機関を受診してください。



  年齢区分
0歳 1- 5- 10- 15- 20- 25- 30- 35- 40-
2012年 0 0 0 0 1 2 0 0 1 1 5
先天性風しん症候群 (Congenital rubella syndrome) とは

 先天性風しん症候群とは、ワクチン未接種で風しんにかかったこともない女性が妊娠初期に風しんにかかり、風しんウイルスが胎児に感染することにより、出生児に主に先天性の心疾患、難聴、白内障等の障害を起こす病気の総称です。風しんは主に春〜初夏に流行するため、妊娠中に風しんウイルスに感染した胎児のほとんどは秋〜冬に生まれています。

 和歌山市内では、1999年以降、先天性風しん症候群の報告はありません。

 これから妊娠する可能性のある女性は、事前に予防接種を受けておくことが重要です。
過去に風しんにかかったかどうか分からない場合は、医療機関で抗体価の検査を受けてから予防接種を受けることもできます。また、抗体価の低い人も予防接種により追加免疫効果が望めます。だたし、妊娠の可能性のある年代の女性が予防接種を受ける場合は、接種後、2〜3ヶ月間の避妊が必要です。妊婦のパートナーや働き盛りの世代の男性、同居の乳幼児や学童からの感染にも注意が必要です。
麻しん Measles
第34週まで報告なし

<和歌山市の状況>
 2008年は、第10〜46週に計23件、2009年は、第16〜24週に計6件でした。
 2010年、2011年は報告なく、2012年も第32週現在まで、和歌山市内で麻しんの報告はありません。


 2011年に関東地方を中心に4月半ば〜5月半ばにかけて麻しん報告数が増加しました。全国の患者の報告は1歳をピークに0〜4歳の小児が最も多いですが、20〜40代の成人患者も40%占めており、子どもだけでなく成人も麻しんに注意が必要です。
  年齢区分
0歳 1歳 5歳 10歳 15歳 20歳 25歳 30歳 35歳 40歳
2008年 0 6 2 7 6 0 0 1 0 1 23
2009年 0 6 0 0 0 0 0 0 0 0 6
2010年 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1
2011年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
2012年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

<麻しんとは>
 麻しんは、麻しんウイルスを原因とする感染症です。典型的には、10日前後の潜伏期を経て発症し、発熱・咳・鼻水・眼脂・結膜充血等のカタル期(2〜4日)、発疹期(3〜5日)、回復期へと続いていきます。感染期間としては、カタル期から発疹後4〜5日までとされています。


 なお、患者との接触から3日以内であれば、ワクチン接種により感染を予防できる可能性があります。早期診断と接触者への迅速な対応が大切です。



<麻しんの診断>
 2015年の麻しん征圧を目指して、様々な取り組みが実施されていますが、診断精度をより高めるために、麻しん(疑い)と診断された場合、PCR検査を全例に実施しています。咽頭ぬぐい液、血液及び尿の採取にご協力ください。



<市民のみなさま・特に子育て中の保護者のみなさまへのメッセージ>
 麻しんの予防には、予防接種の徹底が何より重要です。【Stop 麻しん・風しん】を参照。お子様が満1歳になりましたら、先ず麻しんワクチン(=麻しん・風しん混合ワクチン)を接種しましょう。また、就学前の1年間の2回目の接種も忘れず受けましょう。
 平成20年度から5年間、中学1年生及び高校3年生相当の方も麻しん風しん混合ワクチン接種の対象となりました。対象者の方が接種できる期間は、それぞれ1年間のみです。早めに接種しましょう。



<若年成人の方へのメッセージ>
 ワクチン接種率が向上し,罹患者は減ったものの,接種漏れなどで免疫のない人がかかると重症化する恐れがあります。現在の20歳代及び10歳代後半の若年者は、ワクチン接種率が低く、接種者でも接種から10年以上経過すると抗体価が低下している場合があります。接種歴のない方や抗体価が低い場合は、ワクチン接種が必要です。
 発熱等の症状があった場合には、早期に医療機関を受診しましょう。

Stop 麻しん・風しん = 「予防接種」は最も有効で積極的な予防法!!

 麻しん・風しんの予防接種は,平成18年4月1日より,次のとおりです。
  第1期 満1歳〜満2歳になるまでの間に1回
  第2期 満5歳〜7歳未満で,小学校入学日の1年前の日から小学校入学前日までの間に1回
 いずれも,「麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)」を接種しますが,いずれか一方の既往歴がある場合等には,「麻しん単抗原ワクチン」もしくは「風しん単抗原ワクチン」を接種します。1回接種では、将来抗体価の低下が危惧されます。第2期を忘れず接種しましょう。目標は95%以上。平成23年度の接種率は第1期:99.3%・第2期:94.5%でした。
 「麻しん排除計画」の一環として、平成20年4月1日から平成25年3月31日までの5年間、麻しん・風しんの予防接種 第3期・第4期が実施されています。
  第3期 中学1年生で 「麻しん風しん混合ワクチン」を1回接種
  第4期 高校3年生相当で 「麻しん風しん混合ワクチン」を1回接種

 いずれも95%以上の接種率を目標とし、麻しん・風しんの排除を目指しています。
このことにより 平成2年4月2日以降に出生したものは、高校卒業までに麻しん・風しんワクチンの2回接種が完了することになります。
 平成23年度の接種率は、第3期89.3%、第4期81.7%と、目標の95%をかなり下回っています。

これまでの注目の感染症
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